結納をするかどうか迷っている人へ
「そもそも結納とは何?」

ブライダルは本人、結納は両家が主役

 結納を一言でいうと、結婚することを正式に約束すること。これを結婚する本人たちだけでなく、両家が約束するということです。結婚することで個人と個人の結びつきが、家族と家族の結びつきになります。結婚式は本人たちが主役になりますが、結納は家の代表者になるご両親が主役になりますので、結納を「する」「しない」も含めて、新しい家族を迎え入れる男性側のご両親がどのように考えるかが大切になります。

 最近では結納の式の形は変わってきていますが、結婚の約束を交わすために男性側が酒肴(ゆいのもの)を持参して、女性側が男性側をもてなし両家で飲食をともにしたことが本来の結納のカタチになります。

結納をもっと知りたい。皇室から中国古典の世界へ

 結納の歴史は古く、そのルーツは皇室の婚約の儀式である「納采(のうさい)の儀」にあると言われています。この納采は日本書紀では「信契」であるとか「信幣之物」と呼ばれ、世界遺産で有名な仁徳天皇(4~5C)は、その皇太子の妃となる黒媛を迎えるときに初めてこの納采を行いました。
 実は納采という言葉は、この時代の多くの風習と同じように日本のオリジナルのものではなく、古代の中国から伝来したものです。四世紀から五世紀ごろ、日本では盛んに中国の風習を取り入れてきましたが、その際の最大の参考資料は中国の「礼記」にありました。「納采」の言葉もこの中に見ることができます。

 私たちが結納観を持つ上で、先人がどのような婚約観、結婚観をもっていたのか多少なりとも参考になると思いますので、礼記の解説文を一部引用してみましょう。

礼記 婚儀第44 下見隆雄(中国古典新書)

婚礼とは、まさに二つの姓の友好を結んで、それで男性側の家は先祖をまつるみたまやの礼を失わないようにし、後世子々孫々にまでいたる血統を賜り絶たぬようにするものである。だから君子は婚礼を重視するのである。

こういうわけで婚礼には数々の段階の礼がある。まず納采にはじまり、問名、納吉、納微、請期とすすんで婚礼が行われることになる。これらの礼の行い方は、女性側の家の主人は廟(祖先を祀る場)に莚(むしろ)と几(つくえ)とを設置し、男性側からの使者を廟門の外で拝して迎え、門を入ると階に至るまで三回えしゃくし、階に至ると升(のぼ)ることを三回譲ってから堂に升り、廟で男性側の家からの命をきくのである。かくのごとくするのは、敬い慎むことを重くして、婚礼を正しくするためなのである。

 先人たちにとって「結婚」は、両家の友好はもちろんのこと、先祖から脈々とつながる命を子孫に向けてつなげてゆく大切な儀礼と考えていました。そのため結婚にいたる納采の儀(結納)を始めとしたプロセスを重視して礼を尽くしたのです。
礼記の中で男性側が、女性側の先祖(廟)に納采の品物を献上することが描かれていますが、現代人にとっては少し違和感があるかもしれません。
 しかし、現在も結納品をいただかれた女性の家では、床の間の前に結納品を飾ります。床の間は、その家の神様が宿る神聖な場所とされており、また古い家では床の間の脇にはご先祖様をお祀りする仏壇があります。
 時代が移り変わり2千年以上たっても、結納の品を献上して、花嫁の家、さらにはその家の神様、ご先祖様に「結婚の約束」の礼を尽くすという意味では変わりはありません。

結納をするかどうか迷っている人へ

 結納は堅苦しくて、準備に時間がかかるイメージがあります。男性側からみれば、経済的な負担もあり大変なことでしょう。では、結納は無駄かというと、そうとは言えないところもあります。
  「気は心」という言葉がありますが、男性側がお嫁に来てくれる相手の家に真心をもって、お嫁に迎え入れようする姿勢は、結納金の多少によらず必ず相手に伝わるもの。
 結納をする本人同士にとっては、形式張った結納はあまり気が進まないことかもしれません。しかし、親御さん。特には女性側のご両親にとっては、男性側から大切にされるという証しが欲しいものです。結婚以前から同居しているカップルの親御さんであれば尚さらのこと。
 男性側が女性側の立場になってみて、「お嫁に来てくれて、ありがとう」の気持ちとケジメとして結納をするのは決して無駄なことでなく、本人同士だけでなく両家の付き合いがスムースにいくものです。結納にこめられた女性側への男性側の真剣な思いは「顔合わせ」では伝わらないものでしょう。

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